舞台「いわかける! -Sports Climbing Girls-」

アイドルはなぜ舞台をやるのか?という問いに対して今ひとつ答えが出せないでいますが、何やら今回は2.5次元風味の舞台ということでちょっと趣が違います。単価の高い舞台打つことに味を占められているのはなんとも言えませんが、なーみんがメインで出るということで懲りずに8公演見てしまったのでした。まあキャストは基本的にフレッシュのメンバーだし、コミック原作だし、結局のところかなり自分向けの舞台ではあります。結論から言うとめちゃくちゃ楽しい舞台でした。

事前にアニメも見ていたんですけど、ストーリーはアニメで言えば7〜8話ぐらいまでのシナリオを凝縮したもので、要所を押さえたかなりわかりやすいプロットでした。アニメでこの場面あったよね、という印象的な場面を外さず再現しています。駆け足かもしんないですけどそこも舞台らしい。クライミングの演出もワイヤーアクションとプロジェクションマッピングを駆使しながら鉄パイプで組まれたセットを登るという、2.5次元ならではの表現。そのうえで事前のボルダリングのワークショップの成果も、登るときの姿勢や足の角度、また恐怖の克服といったところで十分活かされていました。明確に続きを感じさせる終わり方ではあるんだけれどとても丁寧なまとめ方で、観劇した後とても清々しい気持ちになれるのがいいですね。そのうえで、メンバーそれぞれが個性を発揮して、ちゃんと自分の魅力を表現できるアイドル舞台らしいアイドル舞台でもあり。今のAKBが好きでメンバーが好きという人ならまず楽しめたのではないかと。

一人一人を見ていくと、まずはどうしてもなーみん。上原隼は基本的には感情の起伏も少なくて、説明セリフも多い役柄。相手に投げかける(放る)ような調子のセリフが特徴的で、個々のニュアンスに関してはなーみんも難しく感じていたようだけど、クールなようでいて熱量はとても高く、その見せ方のバランスは巧みだった。刺々しさも感じるほどにガードの固い序盤から、モノローグを通して次第に感情をこちら側にむき出しにしていく終盤へ。公演の期間が進むにつれて、ふと見せる笑顔や苦悶の解像度が高くクリアになっていったように感じます。そつがないようでがむしゃらに、もがき悩みながら前を向く姿は、現実のなーみんとも重なっていました。そんなシンクロ感まで含めて、とてもいいキャスティングだったのではないでしょうか。前にも書いたかもですけど、少し突き放したようなセリフ回しをするときのなーみんが結構好きなんですよ。ミュージカルでもそういう場面が少しあったのだけど、ストレートプレイの今回はかなりたっぷりと楽しめました。メイン役で出てくれたというのが嬉しいですねえ。

それから驚きだったのはまほぴょんで、発声が驚くほどに舞台向き。すっと立ち上がる美しく落ち着いた声で、強弱も完ぺき。聴いていてとても心地良い。セリフが覚えられない…と言っていて、そう弱音を吐いてしまうのも納得の長ゼリフの多さでしたが、問題なくこなしていて感心。自信持ってほしいなあ。さとちゃんはもう本人がアニメキャラみたいなものなので(笑)、舞台上での存在感がとても自然でしたねー。たとえウィッグ被ってなくてもそう見えていたとおもう。初舞台だけれど、自分の声の使い方もしっかりわかっている感じ。こんなに声を張るさとちゃんを見るのは最初で最後なんだろうなと。そして座長のずっきー。準備期間が限られてしまった中での今回の笠原好役。心配はしていたけれど、初日から千秋楽まで想像以上の完成度でもって役を全う。これはもう本当に物凄いことです。出演していたいくつかの舞台でもそうだったように、ずっきーは等身大の役が本当に似合う。天性のピュアさから生まれる絶対的なポジティブオーラは、ずっきーの周りはもちろん作品全体をも包んでいます。個人的にはアニメと重なるところがとても多くて、ある時からずっきーの声がほとんど上坂すみれさんと一致して聞こえてくるほど。このメンバーでやるからにはずっきーを主役に据えることは最初から決め打たれていたのかもしれないですけど、そう考えると作品が本当によかった。企画が天才です。そしてそれに見事に応えてみせるずっきーも天才だった。

この作品は出てくるキャラクターがどれもこれも濃く、スポーツものなのにほぼバトル漫画みたいな様相を呈しているのが面白いのですが、それらを可愛いメンバーちゃんたちが演じているのも楽しかったです。マジムリでも感じられたえりいのSっ気はここでもしっかり発揮されていた(笑)不思議な圧を感じさせたかと思えば、引きの演技での繊細さも味があって、とにかくえりいらしい。こういう部分が見られるのってアイドル舞台の魅力だよなーと。そんな意味でいうと美波ちゃんもとても良くて、この作品では珍しい何も裏表のないただただ可愛い役を、美波ちゃんらしく可愛く演じていた。満点の笑顔と仕草。彼女のカラフルボイスもしっかり活かされていますよ。それから、聖ちゃんの演技は好きでしたねー。マジムリでも印象的だったのですけど、(誤解を恐れずに言えば)彼女は決して器用に演技をしているというタイプではないと思うんですよね。演じることに対して、その瞬間瞬間でかなりのエネルギーを燃やしている。滾るものを感じさせながらの立ち居振る舞いと言葉がとても響く。今回はキャラクター的にも熱血なところがあったので、そのあたりが分かりやすかったです。そして忘れてはいけないのが茂木さん。みゃおが言ってましたが本当にハマり役です。出で立ちから落ち着いたセリフから醸し出されるオーラが抜群で、解説役にぴったりです。茂木さん演じる十三がそこにいるだけで場が締まる。作品全体にとってみても重石のような錨のような、場を落ち着かせる効果を与えていたのでは。蘭ちゃん演じるキクとの掛け合いも毎回面白かった。

事前には言われてなかったけどアフターイベントがあって歌唱は3曲ほど。「大騒ぎ天国」をまたこのメンバーで聴けたのも嬉しかったし、なーみん推しとしては「チーム坂」も外せない。「チーム坂」は舞台のカンパニーで歌うということを考えるとグッときます。「希望的リフレイン」は久しぶりに聞いたような…。卒業セレモニーや生誕セレモニーがほぼ毎回あったのですが、印象的だったのは怜ちゃんの歌った「タンポポの決心」。怜ちゃんが歌うのを聴くのは去年の4月ぶり。歌声を聴きながら、チームBとして歌う姿が見たかった…と思わずにいられなくて。この曲のアウトロで起こる拍手が世界で一番好きです。かなぶんが16期とともに歌った「初日」も感動的でした。かなぶんの「16期集合〜!」の掛け声で集まる16期の、16期にしかない雰囲気が尊すぎて。こんな時間もだんだんと限られたものになってくる切なさを湛えながら…。

ともあれ一人も欠けることなく完走(もとい完登)できて本当に良かったし、相当に楽しい4日間8公演でした。フレコンもそうでしたが、17期生が入ってくる前にこういう枠組みで催しをしてくれるのは本当にありがたい話。後々まで記憶に残る期間になるんじゃないかなー。

「ひこうき雲」で撮影タイムあり。8公演観て、3日目の2公演だけ良い席だったのでそこだけはまあまあ。

余談なんですが、毎回オープニングとエンディングで鈴木愛奈さんの「もっと高く」が流れてて、AKBの現場で鈴木愛奈さんの歌を何回も聴いてるというシチュエーションにわろてた。この舞台見た人でにゃーさんの実家訪問したことあるやつおる!?(マウントにならない何か)

ミュージカル「オープニングナイト」〜桜咲高校ミュージカル部~

夏になーみんと愛佳ちゃんが出ていたミュージカルの再演で、しかも今度はなーみんがプリンシパルで出るということで、今回も観に行ってみたのでした。いつかメインキャストで出たい!と言ってた矢先で、しかもこんなに短いスパンでの再演は非常に珍しいので青天の霹靂。とはいえ夏公演は観ていてすごく楽しくて自分的にかなり好きになれた舞台だったので、願ったり叶ったりという感じです。そういうわけでなーみんが出るチームRED(女性キャスト)6公演観劇。まあ昔も似たようなことがありましたけど、そういうときに全公演観に行く以外の応え方を相変わらず知りません。

夏も6公演観たのでさすがに物語や楽曲はほとんど覚えていて、オーバーチュアが鳴ったときから(もっと言うと横山だいすけさんの影アナから)帰ってきたなーという気持ちになってきます。という中で、続く最初のナンバーに早速なーみんのソロがあって、そこで真っ先に圧倒されてしまいました。なーみんにはやや高めと思える高音域の歌声が、雲のあわいから差す一筋の光のようで!今でもその優しい残響が耳に残ってリフレインしているぐらいに強い印象を与えてくれます。当然セリフも多くて、なーみんのセリフ回しに惹かれて舞台を見たいと思っていた者としてはそこも嬉しかったですね。なーみんの演じる山城奈央ちゃんは喜怒哀楽のレンジが広いキャラなんですけど、なーみんの笑顔の爛漫とした感じとか、物事を冷静に見ているときの目、少し突き放したようなセリフのニュアンス等々、なーみんの個性が十分感じられました。動きもちょこちょことしていてアニメキャラみたいにユニークで。パーカーのフードを揺らしながらスキップする姿が可愛かったですね。クライマックスにもなーみんのソロがあって、めちゃくちゃしっかり八分音符に歌詞を乗せているのが凄い。そこからのハモりパートも、切なさと悩ましさを湛えた美しさがあり。メインキャストなのでソロパートも前回より格段に多い中で、そこになーみんのしなやかな歌声がよく響くフレーズや譜割が充てられていて、なーみんがこの役になった意味がちゃんとここにあるということが素晴らしかった。やっぱり歌ってるなーみんの笑顔が大好きだなあと思えました。

作品全体を通しても、夏に続いてとても楽しめました。このミュージカルは全てがポジティブな輝きを放っています。ミュージカルというフォーマットを最大限活かした勢いもとにかく爽快。観たあとの感情がとても明るく気持ちが良くて、それを自分自身で全面的に肯定したくなる。作品全体を通して浮かび上がり最後にはっきりと提示されるメッセージも、何度でも受け取りたくなる説得力があります。自分が思い出すのは、子どもの頃に触れた音楽体験です。ディズニー映画「ファンタジア」に始まって、地元のオペラハウスで観た「フィガロの結婚」やバレエ「くるみ割り人形」、さらにこの作品に近いところで言えば、ウェスト・エンドで観たミュージカル「スターライト・エクスプレス」…そんな煌びやかで驚きに満ち溢れた記憶の衝動に、この物語もまた突き動かされています。恵まれた体験をしていながら、この物語の主人公のようには自分はなれませんでした。しかしそんな人ほど、この作品が訴えるメッセージが胸に刺さるのではないかと思います。素敵な作品に出会わせてくれたなーみんに感謝。

舞台「マジムリ学園 -LOUDNESS-」

アイドルはなぜ舞台をやるのか?という問いに対して今ひとつ答えが出せないでいますが、今AKB48が持てるリソースの7割方を注ぎ込んでいるのがこの舞台なので見るしか。ここまでのメンバーを揃えてあるとさすがに豪華絢爛というものです。

相変わらず殺伐とした抗争が繰り広げられているのですが、今回は善玉らしい善玉がいないため殺伐成分が2倍増しになっています。ストーリーとしては、社会的階層の再生産に抗う闘争に向かうも、それは支配階層に仕組まれた闘争で、抗えば抗うだけ再生産に向かっていくという逆説…みたいな話。リリィ―と生徒会の話がめっちゃカジュアルなケンカに見えてくるな()荒地のメンバーのそれぞれが闘う理由は明確で分かりやすいものですし、前々作からのバックグラウンドと2年間の変化が窺えて、キャラクターにスムーズに感情移入できます。それに比べてただの悪みたいな生徒会のメンバーもまた、人数が増えて少年マンガっぽい中二感がさらに魅力的です。そんな様々の要素を伴って、メンバーそれぞれのいつもとは180度異なった顔が見つけられるのがこの舞台の楽しみですね。

印象に残っているメンバーでいうと、個人的にはシュナーベルを演じるみうちゃんがまず挙がってくるような気がします。えりちゃん演じるタウゼントの相棒役ということになっていますが、タウゼント以上に一本気なシュナーベルを演じるにふさわしい、素直で真っ直ぐな、嘘のない演技という感じがして、役柄も相まって見ていて清々しい。それからまた、しっかりと背筋の伸びた立ち姿がとても様になっていて、生徒会のカッコよさを引き立てています。相棒役のえりちゃんも前作同様、無骨な演技が決まっている。そのうえで、ヌルとのやり取りの中では人間らしい部分も見せてくれます。生徒会の新しいメンバーでは、妙に圧を感じる不思議な演技をしていたえりいも面白かった。全然そんなイメージなかったけど、生来のSっ気を感じる(笑)それから、セリフはそれほど多くないものの、さっきーの演技はやはりレベルが一段違います。緻密な役作りとそれらのしっかりとした落とし込みに裏打ちされた非常に自然な表現を難なくやってのけています。それがあのセリフ数でわかることも素晴らしいし、役に生きるとはこのことと感じますね。代役であるのがもったいないくらいで、次にAKBで舞台をやることがあるなら絶対いてほしい人材です。

荒地のメンバーで好きだったのは、何を置いてもまずみーおん。だって、可愛すぎるでしょ(笑)ただただ振り回されてただただ可愛いという、アイドルのお手本みたいなことをやっています。アイドルとして正しいということはやはり代え難いものです。そのうえで語り部としての役割もしっかり果たしています。主人公っぽい感じもしますがそういうわけでもないようで…。それから、実質ダブルキャストとなり途中参加になった十夢ちゃんも一際存在感を放っていました。事あるごとに人にナイフを突きつけていますが、オーラと語り口、立ち居振る舞いそのものからすでに切れ味鋭いものを感じます。これまた衣装が本当に似合っているんですよね。とにかく美しい。対称的に鬱屈としてるのに憎めないユーモアのある聖ちゃんとのコンビもいいです。さっほーゆかるんのインパクトも相変わらず強烈だし、逆に茂木さんのチームK仕込みのオラオラ感と勢いはイメージぴったり。アンサンブルで出ていたきぃちゃんの演技も代役と思えないものがあり、忘れてはいけません。12〜15期のベテランメンバーが自分のイメージを活かして、または脱ぎ去って新しいチャレンジをしているのが素晴らしい。

今回の作品がいいのは、主演の3人がそれぞれに孤高の力強さを持っているということでしょう。ヌルの狂気と根底に潜む復讐心を、やりすぎなほどに感情をアップダウンさせながらこちら側へぶつけてくる麟ちゃんの姿には度肝を抜かれます。前作よりも遥かに大きな、ちょっと心配になるぐらいのエネルギーを毎公演燃やしている。前に「リリィーはもうすでにゆいゆいの一部みたいなもの」と書きましたが、麟ちゃんにとってのヌルもすでに同じレベルにあるように感じます。麟ちゃん的には嬉しくないかもですが(笑)新キャラクターのケーニッヒを演じるゆいりーが、初舞台と思えない鮮烈な印象を残してくれたのは大きなサプライズでした。セリフの発声がクリアで淀みなく、上へ上へと渇望する感情もよく乗って観衆にとって受け取りやすい。持ち前の身体の柔らかさを十分に活かした殺陣も自在な動きで魅せてくれます。彼女の舞台出演自体がサプライズでもありましたが、この舞台に対するグループとしての本気度を示すことにもつながり、結果としても大成功だったのではないでしょうか。そしてこれら全てをまとめ上げきっちりと締めてくれるのは座長のなぁちゃん。そこに居れば目を離すことは難しいというほどのスター性と、いかなる状況でも前を向き続けるポジティブさの具現化と。おなじみのパワフルな歌声も随所で聴かれます。この人に出来ないことがあるのか…と思わずにいられない、座長にふさわしい活躍でした。

そうそう、今回は劇伴や殺陣とシンクロした生ドラムの演奏が付いていたのですけど、殺陣の迫力が音圧を通してリズミカルに伝わって、相当いい演出だと感じました。演劇全体のテンポ感も保たれて、笑いを取るシーンとかの直後であってもすぐに場面が締まります。最初と最後のドラムソロもカッコいい。LOUDNESSというタイトルを象徴する仕掛けでしたね。

8/20と8/25ソワレの2回観劇したのですが、ミニライブはどちらも同じセットリストだったかな。ゆうなぁずっきーがいるので「考える人」とかチーム4感が強い。「百合を咲かせるか?」は麟ちゃんがセンターで、なんとリリィ―のセリフがブレイクになっていました。初日にきょんちゃんのバースデーセレモニーがあって、なんとあの「ひまわりのない世界」が聴けたのは相当レアな出来事でした。じゃんけんで決めたというユニットの相手が怜ちゃんなのもよかったです。ゲストパートは芹佳ちゃん回と、さとなーずんのボブ3姉妹回でした。なーみんがニッパーで矯正のワイヤーを切っている話は2週間ぐらい前の配信で言ってて、これの伏線だった!?ってなった(たぶん違う)。香織ちゃんがことあるごとにオチ要員に使われてるのが面白すぎたなー。撮影タイムは初日だけ舞台練り歩きがなかったのはうーむという感じですが、前回よりは撮れたのでまあ。25日は席が下手でなーみんはずっと上手にいたので、最前だったのにほとんどチャンスが無くてまじで泣いた…

いま大千穐楽公演の配信見ながらこれ書いてますが、どうやら公演は無事に完走ということになりそうで、かなり厳しいことになっていたこの8月のグループの状況を考えるとまさに奇跡です。ゆうなぁを始め中心メンバーを数多く投入したこともあり、しっかりとAKB48の総力を集めた舞台として楽しめたように思います。やっぱりこの人たちがいるAKB48が好きですねえ。チームを超えたメンバーの絡みも楽しかったです。メンバーの拘束期間が長いのは考え物ですが、またこのぐらいの規模で舞台をやるならもっと回数見てもいいかもしれません。これからしばらくはシングルのキャンペーンになるのかなー

というわけで写真いくつか。