ミュージカル「星の導く夜に」

なーみんが出ている新作ミュージカルを見た。

キャストはある特定のファン層を意識した座組になっていて、その中になーみんがいるのは未だに不思議な感じはする。なーみんの2役(本当は3役)はそれぞれがよかったと思う。メインのカスミ役はなーみんの暖かい雰囲気とか優しさに溢れていて、こんな世界線の彼女も絶対にいるよなという気持ちで見ていた。カスミについてなーみんは「共通点が見つからない(ぐらい素敵な子)」とパンフレットで言っていたが、まあ確かに家の中とか楽屋裏、オフの日はそうなのかもしれないが、僕はこの役で見せていたような暖かさをなーみんと接していてずっと感じていたので、すごく自然な流れで役柄が入ってきたし、なーみんの中での自分の色の落とし込みもとてもうまくいってたんではないかなと思える。カスミ役として歌っていたM9小さな命は、そんな雰囲気もありつつ、なーみんの歌のスイートスポットが活きたベストなアクトだった。8分の12拍子に載せる詞のひとつひとつがストーリー性を感じさせて、歌い出しで提示されるモチーフからサビまで展開され歌われるメロディとハーモニーが美しい。なーみんのための曲と思えるぐらいに、何度か見るうちでの自分の中のハイライトとなっていた。

もうひとつのリタ役は結構重めの役どころで、カスミと比較して演技と歌の難易度は高いのだが、少し幸の薄い感じもハマるのは新しい発見だった。なぜかなーみんしかやっていなかったヴィナ役も割と普段のなーみんのイメージに近い気がしてすっと入ってきた。

なーみん以外のキャストも、自分的にはこれまでいろんな場所で見てきた人が多い。その中ではまず小林愛香さんのことは外せない。彼女にはチャーミングな部分と気品を感じさせる部分とそれぞれがあると思っていて、どっちの一面もこのミュージカルのなかに表現されていた気がする。そして何よりも歌が素晴らしい。強弱とアーティキュレーションのつけかたがちゃんと舞台仕様なのだ。どの歌もすごくドラマチックに響いてきて、彼女の持ち合わせているスター性をさらに引き立てていたと思う。彼女は初ミュージカルらしいのだが、似たようなことをライブの1シーンでやっていたのを僕はだいぶ前に見たことがあったな、と見ていて思い出していた。

花宮初奈さんの歌はこれまで大きな会場でしか聞いたことがなかったので、実質初めてのようなものだったが、ルックスのイメージそのままにとても丁寧で美しく聴きやすかった。舞台上で振り切った演技もできることも初ミュージカルとは思えない驚きがあった。なーみんとダブルキャストとなっていた絵森彩さんの演技と歌も、今までキャラが濃い役どころでしか知らなかったためとても新鮮だった。なーみんとはまたカラーの違う親しみやすさが出ていたと思うし、倍音が綺麗な歌で、ミュージカルでまた見たいと思った。それからやはり堀内まり菜さんの演技は人を明るい気持ちにさせてくれる。

なーみんが今まで出た2作品と比べると(制作は同じだが)ミュージカルとしての魅力は一番濃いような気がする。音楽が連綿と継ぎ目なく連なっていて、組曲として感じられる構成が楽しい。セリフも当然あるが、楽曲との境界をあまり感じさせない。ストーリーは明快、楽曲も粒揃いでメロディをすぐに口ずさめる。男性キャストもいることでボーカルアンサンブルとしての色彩感も深い。座組的には企画先行のようにも見えるけれども、しっかりとこれぞミュージカルという体験ができます。楽しかった。

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