だいぶ久しぶりに国立西洋美術館へ。
まいど美術展には行こうと思いつつ結局行けてないことが多いのですが、今回は読売中高生新聞の企画でマイ推しメンがこの展覧会を取材していて、自分の配信でも相当お勧めしていたのが一つ。それだけではなくて、今回の展示の目玉のファン・ゴッホの《ひまわり》を見たかったというのがもう一つ。
というのも、20年ぐらい前にアムステルダムのファン・ゴッホ・ミュージアムで《ひまわり》を見たことがあるんですよ。その記憶があったので、今回ロンドンのナショナルギャラリーから来るというのを聞いて「あの時に見たのは???」となった。調べたら全部で7点あるというのを20年越しに知った次第です(美術史に明るくなさすぎる)。そんな感じでがぜん興味が湧いてきたのもあって、勢いでチケット取っちゃった。
構成としてはルネサンス期から印象主義までのヨーロッパ各地での西洋絵画の潮流を追っていくというもので、イギリスからの視点を軸に、というのが一つのテーマ。入場してさっそく、推しメンが何度も「描き込みがすごい!」と言っていたクリヴェッリの《聖エミディウスを伴う受胎告知》がある。初っ端からこの美術展の中ではもっとも巨大な作品で、目の前にすると強烈なパースペクティブが感じられます。さらに近づいてみると、推しメンの言うとおり、細かな装飾のディテールがみるみる浮かび上がってくる。この時期の宗教画らしい、リアリティとアンリアリティの狭間の別世界。
それにしても、去年上野の森美術館でフェルメール展を見た(これまた記事にしてない)ときも思ったけれど、17世紀のオランダ絵画の厳然としたスタティックさは毎回目を瞠ってしまいます。静物画でも風景画でも肖像画でも、空間を標本にしたかのような世界が、カンバスを通して音を立てずに、しかしくっきりと立ち現れる。こういう感覚は美術館に来たなぁ、という感じがする笑 それに対して、同時期のスペイン絵画の表情の豊かさよ。今にも動き出しそうな、活き活きとした躍動感にとても親しみが持てます。時代の人々の生活、そこにある時間の流れを巧みに切り取った作品群。
ラストは19世紀印象主義ーポスト印象主義絵画なんですけど、この美術展で一番印象に残ったのがセザンヌの《プロヴァンスの丘》です。後期のセザンヌがここまで画風を変化させていたというのを知らなかっただけなのですが、それを置いておいたとしてもとても面白い。遠くに伸びる丘の風景やそれを彩る木々、岩肌が絶妙にディフォルメされることで、かえって目に見える情報は整然と(展示内の言葉を借りれば「幾何学的に」)なり、代わって光や温度、匂いといった要素が手に取るように感じられる…。19世紀絵画とキュビズムを繋ぐ、クラシック音楽で言ったらエリック・サティみたいな立ち位置が好きですね。もちろん、ルノワールやモネのザ・印象主義な作品群も素晴らしい。
その奥に待っているのがファン・ゴッホの《ひまわり》。昔は子どもながらに変哲もない静物画としか思っていなかったけれど…目の前にして受ける印象は、(厳密には異なる作品としても)20年前に見たときとはだいぶ違っている。セザンヌの作品でも感じた南フランスのからっとした眩しい陽光を想起させるような黄色の世界がとにかく美しい。間近で見ると、ファン・ゴッホによる重厚な塗りの筆致が迫力を感じさせます。何時間でも見ていられそうな、非常に複雑なニュアンスを含んだ黄色です。全然見飽きないのだけど、入場回が一番最後だったので、残念ながら閉館時間で退出。
《ひまわり》以外は小粒な作品が多いのかな、とも思ったのですが、そういう作品にも想像力を掻き立てられたり、西洋絵画のイギリスにおける受容史という面でも、時代を追いながら分かりやすく理解していける構成で、興味の尽きない美術展でした。久しぶりに家から出て楽しかった!()