横綱鶴竜

例によって1週間前の話なんですが、鶴竜の横綱推挙式と土俵入りを見に明治神宮まで行ってきました。
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到着が15時ちょい前で、すでに見物客で社殿前はいっぱい。なんとか視界を確保できる位置につけて、鶴竜や北の湖理事長、井筒親方らが南の門ほうから本殿のほうに向かったあとは推挙式のあいだ待ちぼうけ。本殿のほうで何やらやっているのは見えるんですが、背伸びしてようやくという感じだし、陽射しがキツくて体力使いました。結果、現場にいるのにニコ生で詳細確認というおかしなことに。40分ぐらいで本殿から出てきて、それからまたしばらく待ったところで、聞き慣れた呼出秀男の木の音。木村庄之助と秀男、新横綱鶴竜、太刀持ち勢、露払い鏡桜で奉納土俵入りが始まりました。貴乃花が指導ということで微妙に心配してはいたんですが、貴乃花ほどせり上がりの前傾も深くはなくのっそのっそという感じでもなくでしたね。最初だからか、かなりゆっくりめの土俵入りでしたが、これからどう転ぶか。観たあとは一応お参りして帰りました。なんでか明治神宮は人が多いときにしか来ていない。

2014-03-28 15.51.13
そういえば、土俵入りの指導が貴乃花がやったというのは興味深いことでした。鶴竜の時津風一門にとっては柏戸以来53年ぶりの横綱誕生だったわけですが、そこまで昔となると横綱経験者はすでに現役年寄には皆無。こうした場合どこかの一門から経験者を呼び寄せて指導をすることになりますが、現在の二所ノ関一門に伝わる雲龍型土俵入りというのは、二所ノ関の始祖・横綱玉錦のものではなく、その死後に昇進した横綱若乃花のために時津風の始祖・横綱双葉山が21代木村庄之助を遣わせて指導したもの。この型を現在受け継ぐ元横綱といえば、まさしく貴乃花なわけです。ただ、貴乃花は二所一門をすでに離脱しているので、協会としては理事長の一門である出羽一門から武蔵丸あたりを呼び寄せる可能性が高いかと思ってましたが、すんなり貴乃花が呼ばれましたね。こういう系譜を考慮してのことなのかどうかはわかりませんが、60年越しで土俵入りが時津風一門に還ったということで、意外と歴史的なことだったという話。
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あゝ 思ひ出のカロヤン・ステファノフ・マハリャノフ

鶴竜の初優勝、遠藤の上位挑戦、千代丸・千代鳳兄弟の活躍などいろいろ話題に事欠かなかった今年の大阪場所ですが、カロヤンこと元大関琴欧洲の引退は大きなニュースでした。

初日こそこれぞカロヤンという相撲で勝ち、それなりに期待を持ったものの、翌日からは力なく寄り切られる淡白な相撲、あっさりと前に落ちる相撲、最後には白鵬に投げられ手をついてしまいました。あの手は身体のどこかをかばったような感じですね。今場所は大関陥落の直接の原因になった肩のケガもあったと思いますが、それ以上に足腰の衰えが目に見えるレベルでひどく、考えれば先場所はよくぞ勝ち越したもんだと思います。三役を務められる力はもう残ってないとして、あとの選択としては小錦や貴ノ浪のように平幕でも取る手もある。しかしながら初場所に大関復帰を逃して、もうモチベーションも続かない状況にあったんでしょう、この時点で引退となりました。

引退会見で「最後に白鵬関とやれてよかった」と涙ながらに語ったのにはグッと来てしまいましたね。この2人、新十両・新入幕・新三役が近く、次の大関を争った時期もありました。10年前の平成16年は続々と期待の若手力士が関取になり、白鵬、安馬(日馬富士)、琴欧州(琴欧洲)、萩原(稀勢の里)、豊ノ島、琴奨菊と、十両の土俵にかなりの活況があったものです。この中の2人が横綱、3人が大関、1人が関脇まで実際に上がったわけで、黄金世代の一つかも。他にも露鵬や時天空も注目されてましたね。その中でもやはり琴欧州と萩原への期待ぶりはものすごく、幕下時代から「曙と貴乃花の再来」とか言われていました(今の遠藤と大砂嵐的な…)。白鵬が大注目されるようになったのはいきなり幕内で大勝ちしてからだったような。一時は新三役までは先んじた白鵬に大関争いで勝利し、飛ぶ鳥を落とす勢いの琴欧州でしたが、白鵬の大関昇進後は完全に水を開けられる形に。それでも、平成20年夏の初優勝は朝青龍と白鵬という二人の強豪を本割で連破しての優勝であり、記憶されて然るべきものです。琴欧洲と稀勢の里の明暗、琴欧洲と白鵬の明暗。結果的に、前者は分かれた後にある程度埋まり、後者は現役最後の土俵でもまざまざと見せつけられたということに。10年前に相次いで関取になった若手たちも半数以上が30代に差し掛かろうというところで、その一角である琴欧洲が引退したのを考えると、一つの世代の終わりが始まりそうな感じです。当時17歳だった稀勢の里も、残された時間はもうあまりないかもしれない。

相撲としては右四つ左上手で万全、2mの巨躯、猛烈な腕力があって、上手を引き付けての寄り、投げが強かった。が、大関昇進直後にケガをしてからというものの、頭を下げて中に入ろうとする小さな相撲になってしまい停滞。安美錦、豊ノ島、最近では栃煌山、松鳳山という苦手力士に毎度苦しめられたのもあって、大関としては47場所中11勝以上が2回だけという並の活躍に終わってしまいました。23年以降はケガが頻発して休場も多くなり、魁皇の引退後はすっかり「いつ陥落するのか」枠に入れられていた感があります。

思い出の相撲というと、何せ勝ちっぷりはあっけなく、負けっぷりは非常に豪快なため、いざ思い出すと負け相撲ばかりが浮かぶのですが、挙げるとすればすっかり昔で言う張出大関が定位置になっていた2年前の24年初場所13日目の相撲。相四つで、もはや圧倒的な実力差があり全く歯が立たないであろうと見られていた白鵬に対し、立合いで左前廻しをがっちり掴み、そのまま引き付け怒涛の寄りを見せて完勝した相撲を実際に国技館で見たのでした。ちなみにこの白鵬の敗戦で把瑠都の初優勝が決まり、騒然とした中での座布団の乱舞をよく覚えています。この場所は9日目の鶴竜が白鵬に初勝利した相撲も観ていて、座布団の舞がなんとも印象深い。

さて、しかしながら、2mの巨体ゆえの豪快な負けっぷり、強さを見せたあとの別人のような脆さもカロヤンの魅力の一つであるため、ここで思い出の負け相撲を紹介しましょう。

・5位 平成22年11月 白鵬戦
豊ノ島との決定戦を前に突き進む白鵬を千秋楽結びの一番で迎え撃ったが、立合い即左から投げられカツオのように土俵に叩きつけられるカロヤン。NHK藤井アナの名言「何事も無かったかのように優勝決定戦です」
・4位 平成21年5月 朝青龍戦
下手投げで完全にひっくり返され見事な大回転を魅せる。翌日白鵬の33連勝を止める大仕事を成し遂げるが完全に忘れられている。
・3位 平成17年9月 稀勢の里戦
圧倒的有利の星勘定で優勝争いを独走していたカロヤン。前日の朝青龍戦には敗れたもののまだ星の差1つをつけており、さらに相手が前頭16枚目の稀勢の里であり、好調とはいえ対戦相手でいえば横綱より圧倒的有利だったはずが、何も出来ずに力なく押し出され、結局優勝を逃す。
・2位 平成23年11月 白鵬戦
白鵬絶対有利と思いきやカロヤンが右四つ左上手、白鵬下手一本の体勢に。しかし一瞬で巻き替えを許し完全に懐に入られる。肩越しの上手一本でなんとか耐えるものの、最後は伝え反り気味の下手投げで豪快にブン投げられ、完全に白鵬に料理された形となった。
・1位 平成20年5月 安美錦戦
カロヤンが栄光の幕内最高優勝を飾った場所。11-12日目に朝青龍と白鵬の両横綱を一方的な相撲で圧倒し、もはや優勝間違いなしと見られた13日目の安美錦戦、安美錦の狡猾な(褒め言葉)立合いに完全に惑わされ何も出来ずに後退。覚醒したと思われていた矢先の平幕相手の完敗。やっぱりカロヤンはカロヤンだったのだ。翌日安馬に勝って無事に優勝したものの、スポーツ紙の話題は千秋楽結びの朝青龍と白鵬の土俵上での睨み合いに持っていかれるのだった。

なんというか、こう見ると存在感的には魁皇の後継であり千代大海の後継でもありますね。いろいろな意味で楽しませてもらいました。大関47場所という数字も、名大関と言うにふさわしいものでしょう。これからは親方生活ということになるんでしょうが、琴欧洲親方でいられるのは3年だけなので、武蔵丸みたいにどうにか株を確保しないとですね。まあ武蔵丸のときと違って、団塊の世代が次々退職して株が余っていますし、協会の公益法人化の影響もありますし、たぶん大丈夫だろうとは思います。何はともあれお疲れ様でした。

ちょうど1年前、靖国神社奉納相撲でのカロヤン&鶴竜。1年前、まだ2人は大関だった…
2013-04-05 13.29.03

初場所千秋楽

2014-01-26 10.18.30
今場所は千秋楽にようやく観戦。昨年も初場所は千秋楽でしたね。というか、今場所はチケットも買ってないし忙しいしということでほとんど行くつもりなかったんですけど、つい夜中の3時頃に思い立ってしまい、2時間半ほど寝て電車に飛び乗るのであった。着いたら7時で整理券は200番台。無事に自由席当日券買えました。1時間半ほど本でも読みながら並んでたわけですけど、すぐ後ろにイギリスから来たという外人4人組が並びまして、これが朝っぱらから騒ぐわ酒飲むわ煙草吸うわの最悪なクソどもでして、朝からストレス溜まってました。この日は館内入ってからも他に変なのに出くわしまくってストレスフルだったおかげで、十両までの取組の印象がまるでない。人が増えれば気にならなくはなったのはよかった。

さて千秋楽の土俵。あとで録画で見返すと良い相撲が多い。千代鳳なんか絶好調という感じだったし、豊ノ島-松鳳山も豊ノ島が上手が取れないながらも我慢して熱戦になった。んですが、今場所の幕内前半が盛り上がっていた要因というべき役者の方々、つまり遠藤、大砂嵐、里山、舛ノ山あたりですが、この全員がこの日敗れたことで館内の熱気がみるみる萎んでいくわけです。遠藤はこの日負けて三賞を逃したのもあるし、里山なんかは不可解な物言いがついて負けてしまったので歓声の失望ぶりがものすごかった。髷掴みの反則は未だに解釈に揺れがあるような気がしますね。確かに難しい裁定ではあったと思いますが。ともかく、盛り上がりという面ではまったく千秋楽とは思えないもの。とはいえ里山の持ち味は発揮された相撲だったと思いますし、遠藤にしてもあれは廻しを切ってから間髪入れずの出し投げを食らわした貴ノ岩を褒めるべきでしょうね。

後半はもう、時間一杯になっても勝ち名乗りを受けてもほとんど拍手の起こらない寂しさでしたが、よりにもよってこれより三役の関脇相撲で豪栄道と琴欧洲がやらかしましてね…もう言葉もありませんよ。まあこれで稀勢の里が出場してあっけなく負けたりしたら更に盛り下がってたか。連続出場が途切れたのは残念ではあるもののやっぱり休場でよかった。

そして結びの一番、白鵬に鶴竜。とりあえず隣に座ってた人の鶴竜連呼が凄かった。正直なところ、好調ぶりが目に見える今場所の白鵬でなくとも、鶴竜が白鵬に勝つには日馬富士みたいに立合い前褌を取って出し投げを打ちながら頭を着ける形ぐらいしか思い浮かばないので、ほぼ白鵬の全勝は堅いと見てる人が大多数だったと思います。実際前褌狙って立ってましたが、幸運なことに白鵬の踏み込みが中途半端。両者差せずに一旦離れたところを、白鵬が左から張る。ここでよく鶴竜が二本差されなかった。今場所後半からの動きの良さが活きた場面ですかね。左は差されるものの一瞬の巻き替え。いやあ、こんな相撲ができたのかと。かくして優勝決定戦へ。もう隣は狂喜乱舞でしたよ。

決定戦は両者本割とほとんど手を変えずに、3秒ほどはほぼ同じ展開。本割は本来鶴竜の悪癖といえる右後方へ回り込もうとする引きから勝機が生まれたわけですけど、白鵬が鶴竜の右の腕を泉川に極めるかとったりにでも行くような形にしていたので、体を離せなかった。白鵬はとにかく鶴竜と密着せんとばかりに付いていきましたね。鶴竜が右腕を抜こうとしたところで左四つ。ここで先に上手を取ればさすがに白鵬だった。両者とも左四つは得手と逆なわけですけど、白鵬のほうがそれなりに取れる分、右四つで渡り合うよりはリスクが少なかったとも言える。

今回も表彰式、手打ち式、神送りの儀式と見届けて千穐万歳。優勝パレードは待ってる途中寒すぎて死にそうでしたけど、なんと遠藤が旗手で出てきたので皆大喜びだったとさ。

今場所は遠藤、玉鷲、千代鳳、負け越したけども豪風や里山と、持ち味を発揮した力士が多かったと思うんですが、一番強い印象を残したのは実は白鵬なんですよね。流れるように続いていく攻め、不利な状況になってからの修正の対応力・判断の早さというのが今場所際立った。特に豪栄道戦は白眉といえるもので、変化で前褌を取られて頭を着けられかけるという最悪の出だしから、相手を起こしてから突き落としでまず上手を切る。豪栄道が体勢を崩したと同時に逆に自分が上手を取りながら、下手も切ってすぐさま上手投げ。白鵬が動くごとに体勢が良くなっていく、この間10秒足らず。素晴らしい相撲だった。白鵬が場所を通してここまで良かったのってかなり久々なんじゃないかと。一昨年あたりは不調からかち上げ張り手と朝青龍みたいな相撲になってたし、去年も43連勝後半あたりからは雑な相撲もあった。白鵬といえば、14日目の内無双も鮮やかでしたね。才気煥発の相撲を見せた白鵬、まさに優勝に能う活躍でした。

鶴竜に関しては、場所前半はここのところいつもの危なっかしい相撲が多すぎたので全く評価していませんでしたが、豪風戦あたりから急に相撲が強く早くなりましたね。白鵬戦なんかはもう、大関昇進してからのここ2年ぐらいは何だったのかと言いたくなる相撲でした。14勝はもちろん評価しなければならないんですが、綱取りということになるとどうか。今場所に関しては先場所の稀勢の里より1勝多く上積みしたものの、ここまでの大関としての勝率を見るとその差は歴然なわけです。つまり綱取り前8勝7敗の日馬富士と同じ状況。加えて今場所の相撲内容も抜きん出たものを発揮したわけではないと。今場所の14勝は3月場所を綱取り場所と認めて試してみる価値を持たせはしたものの、今場所の稀勢の里以上に厳しい目で見られるような気はします。なんか野暮な人が人種差別だとか稀勢の里贔屓だとか言い出しそうですが、優勝とか星数だけじゃなくて相撲を見なさい相撲を。

そんな感じで、稀勢の里は残念だったし、日馬富士も不在、カロヤン氏は遠藤に引導を渡され、豪栄道は相変わらずのダメ相撲、琴奨菊はなんかすでに魁皇的な悲壮感を湛えてましたが、鶴竜のおかげでなんとか格好がついたというところでしょうか。目立った力士は多かったので、今年一年の好材料になってほしい。にしても、今場所は好景気でしたね。千秋楽はそりゃ人は入るんですが、平日も満員とは行かないまでもマス席はテレビで見える範囲は埋まっていましたし。協会の公式Twitterを見ても自由席がほぼ午前中には売り切れる。朝青龍引退直後とか、賭博・八百長直後とかは14時とかに言ってもまだありましたよ。ファンにはありがたい時代でしたけど、ああいう状況が続いてると協会も立ち行かないですからね。人気復活は嬉しいことです。八角さんはじめ広報の人たちはホントお疲れ様ですと言いたい。

そういえば、協会公式のUstream配信がいきなり有料になった件。あれは今まで無料で見せてくれてたのが太っ腹すぎたので仕方のない話だと思いますよ。とはいえ値段設定が凄いことになってるので、あのクオリティのままだとしたらNHKで充分かなと。実際どのくらい課金した人いたんだろーね。あと、この件に関しての意見で「せめて早い時間の取組は無料で開放しないとファンの裾野を広がらない」というのがあったんですけど、幕下・三段目以下の取組を見る人っていうのは裾野どころか相撲ファンの頂点ですので…。しかしながら、入ったばかりの序ノ口力士の親御さんとかが相撲場に行けないながらも息子の取組を見るためには公式配信が唯一の手段だったので、そこの配慮は必要だと思うんですよね。これは国技館1階のチケットチェックにも言えることなんですけど。そういえば、今場所は千秋楽見た限りだと午前中はチケットチェック要員がいなかったような…?

おなじみのやつ。
2014-01-26 13.15.40
ところで、昭和20年代から優勝額に彩色を施してきた佐藤寿々江さんが昨年一杯で引退されたとのこと。今場所の優勝額から普通のカラー写真になるそうで「優勝色彩写真額」はこの白鵬とその次の日馬富士が最後。新優勝額は白鵬から始まる。
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夏場所前に取り外されるカロヤン・ステファノフ・マファリャノフ氏の栄光とともに。
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いくつか両国界隈、というか隅田川の写真。
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