今場所は千秋楽にようやく観戦。昨年も初場所は千秋楽でしたね。というか、今場所はチケットも買ってないし忙しいしということでほとんど行くつもりなかったんですけど、つい夜中の3時頃に思い立ってしまい、2時間半ほど寝て電車に飛び乗るのであった。着いたら7時で整理券は200番台。無事に自由席当日券買えました。1時間半ほど本でも読みながら並んでたわけですけど、すぐ後ろにイギリスから来たという外人4人組が並びまして、これが朝っぱらから騒ぐわ酒飲むわ煙草吸うわの最悪なクソどもでして、朝からストレス溜まってました。この日は館内入ってからも他に変なのに出くわしまくってストレスフルだったおかげで、十両までの取組の印象がまるでない。人が増えれば気にならなくはなったのはよかった。
さて千秋楽の土俵。あとで録画で見返すと良い相撲が多い。千代鳳なんか絶好調という感じだったし、豊ノ島-松鳳山も豊ノ島が上手が取れないながらも我慢して熱戦になった。んですが、今場所の幕内前半が盛り上がっていた要因というべき役者の方々、つまり遠藤、大砂嵐、里山、舛ノ山あたりですが、この全員がこの日敗れたことで館内の熱気がみるみる萎んでいくわけです。遠藤はこの日負けて三賞を逃したのもあるし、里山なんかは不可解な物言いがついて負けてしまったので歓声の失望ぶりがものすごかった。髷掴みの反則は未だに解釈に揺れがあるような気がしますね。確かに難しい裁定ではあったと思いますが。ともかく、盛り上がりという面ではまったく千秋楽とは思えないもの。とはいえ里山の持ち味は発揮された相撲だったと思いますし、遠藤にしてもあれは廻しを切ってから間髪入れずの出し投げを食らわした貴ノ岩を褒めるべきでしょうね。
後半はもう、時間一杯になっても勝ち名乗りを受けてもほとんど拍手の起こらない寂しさでしたが、よりにもよってこれより三役の関脇相撲で豪栄道と琴欧洲がやらかしましてね…もう言葉もありませんよ。まあこれで稀勢の里が出場してあっけなく負けたりしたら更に盛り下がってたか。連続出場が途切れたのは残念ではあるもののやっぱり休場でよかった。
そして結びの一番、白鵬に鶴竜。とりあえず隣に座ってた人の鶴竜連呼が凄かった。正直なところ、好調ぶりが目に見える今場所の白鵬でなくとも、鶴竜が白鵬に勝つには日馬富士みたいに立合い前褌を取って出し投げを打ちながら頭を着ける形ぐらいしか思い浮かばないので、ほぼ白鵬の全勝は堅いと見てる人が大多数だったと思います。実際前褌狙って立ってましたが、幸運なことに白鵬の踏み込みが中途半端。両者差せずに一旦離れたところを、白鵬が左から張る。ここでよく鶴竜が二本差されなかった。今場所後半からの動きの良さが活きた場面ですかね。左は差されるものの一瞬の巻き替え。いやあ、こんな相撲ができたのかと。かくして優勝決定戦へ。もう隣は狂喜乱舞でしたよ。
決定戦は両者本割とほとんど手を変えずに、3秒ほどはほぼ同じ展開。本割は本来鶴竜の悪癖といえる右後方へ回り込もうとする引きから勝機が生まれたわけですけど、白鵬が鶴竜の右の腕を泉川に極めるかとったりにでも行くような形にしていたので、体を離せなかった。白鵬はとにかく鶴竜と密着せんとばかりに付いていきましたね。鶴竜が右腕を抜こうとしたところで左四つ。ここで先に上手を取ればさすがに白鵬だった。両者とも左四つは得手と逆なわけですけど、白鵬のほうがそれなりに取れる分、右四つで渡り合うよりはリスクが少なかったとも言える。
今回も表彰式、手打ち式、神送りの儀式と見届けて千穐万歳。優勝パレードは待ってる途中寒すぎて死にそうでしたけど、なんと遠藤が旗手で出てきたので皆大喜びだったとさ。
今場所は遠藤、玉鷲、千代鳳、負け越したけども豪風や里山と、持ち味を発揮した力士が多かったと思うんですが、一番強い印象を残したのは実は白鵬なんですよね。流れるように続いていく攻め、不利な状況になってからの修正の対応力・判断の早さというのが今場所際立った。特に豪栄道戦は白眉といえるもので、変化で前褌を取られて頭を着けられかけるという最悪の出だしから、相手を起こしてから突き落としでまず上手を切る。豪栄道が体勢を崩したと同時に逆に自分が上手を取りながら、下手も切ってすぐさま上手投げ。白鵬が動くごとに体勢が良くなっていく、この間10秒足らず。素晴らしい相撲だった。白鵬が場所を通してここまで良かったのってかなり久々なんじゃないかと。一昨年あたりは不調からかち上げ張り手と朝青龍みたいな相撲になってたし、去年も43連勝後半あたりからは雑な相撲もあった。白鵬といえば、14日目の内無双も鮮やかでしたね。才気煥発の相撲を見せた白鵬、まさに優勝に能う活躍でした。
鶴竜に関しては、場所前半はここのところいつもの危なっかしい相撲が多すぎたので全く評価していませんでしたが、豪風戦あたりから急に相撲が強く早くなりましたね。白鵬戦なんかはもう、大関昇進してからのここ2年ぐらいは何だったのかと言いたくなる相撲でした。14勝はもちろん評価しなければならないんですが、綱取りということになるとどうか。今場所に関しては先場所の稀勢の里より1勝多く上積みしたものの、ここまでの大関としての勝率を見るとその差は歴然なわけです。つまり綱取り前8勝7敗の日馬富士と同じ状況。加えて今場所の相撲内容も抜きん出たものを発揮したわけではないと。今場所の14勝は3月場所を綱取り場所と認めて試してみる価値を持たせはしたものの、今場所の稀勢の里以上に厳しい目で見られるような気はします。なんか野暮な人が人種差別だとか稀勢の里贔屓だとか言い出しそうですが、優勝とか星数だけじゃなくて相撲を見なさい相撲を。
そんな感じで、稀勢の里は残念だったし、日馬富士も不在、カロヤン氏は遠藤に引導を渡され、豪栄道は相変わらずのダメ相撲、琴奨菊はなんかすでに魁皇的な悲壮感を湛えてましたが、鶴竜のおかげでなんとか格好がついたというところでしょうか。目立った力士は多かったので、今年一年の好材料になってほしい。にしても、今場所は好景気でしたね。千秋楽はそりゃ人は入るんですが、平日も満員とは行かないまでもマス席はテレビで見える範囲は埋まっていましたし。協会の公式Twitterを見ても自由席がほぼ午前中には売り切れる。朝青龍引退直後とか、賭博・八百長直後とかは14時とかに言ってもまだありましたよ。ファンにはありがたい時代でしたけど、ああいう状況が続いてると協会も立ち行かないですからね。人気復活は嬉しいことです。八角さんはじめ広報の人たちはホントお疲れ様ですと言いたい。
そういえば、協会公式のUstream配信がいきなり有料になった件。あれは今まで無料で見せてくれてたのが太っ腹すぎたので仕方のない話だと思いますよ。とはいえ値段設定が凄いことになってるので、あのクオリティのままだとしたらNHKで充分かなと。実際どのくらい課金した人いたんだろーね。あと、この件に関しての意見で「せめて早い時間の取組は無料で開放しないとファンの裾野を広がらない」というのがあったんですけど、幕下・三段目以下の取組を見る人っていうのは裾野どころか相撲ファンの頂点ですので…。しかしながら、入ったばかりの序ノ口力士の親御さんとかが相撲場に行けないながらも息子の取組を見るためには公式配信が唯一の手段だったので、そこの配慮は必要だと思うんですよね。これは国技館1階のチケットチェックにも言えることなんですけど。そういえば、今場所は千秋楽見た限りだと午前中はチケットチェック要員がいなかったような…?
おなじみのやつ。
ところで、昭和20年代から優勝額に彩色を施してきた佐藤寿々江さんが昨年一杯で引退されたとのこと。今場所の優勝額から普通のカラー写真になるそうで「優勝色彩写真額」はこの白鵬とその次の日馬富士が最後。新優勝額は白鵬から始まる。
夏場所前に取り外されるカロヤン・ステファノフ・マファリャノフ氏の栄光とともに。