音楽朗読劇「シラノ」

これまたしばらく経ってしまいましたが行ってました。伊波杏樹さんの出演した4公演について。
使用年数のわりに内装が古めかしい
海外文学(岩波文庫でいうと赤帯)をもとに田尾下哲さんが脚本・演出、音楽とともに声優さんが朗読を聞かせるという企画の第2弾で、今回は戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」が題材。 登場人物は中心の3人のみに絞られていて、3人のセリフだけで芝居が回るように脚本されているのだけど、それだけでもうまいことエッセンスが浮かび上がるようになっている、出典を知らない人にとっても分かりやすい構成。思っていたよりステージがショーアップされていた。照明やセット、衣装がとっても華やか。シラノとクリスチャンによる前説後のロクサーヌの登場シーンは(下手側で目の前だったので)あまりの美しさに思わず息を飲んでしまいましたね。杏樹ちゃんのいつもと違うヘアメイクが大変素敵でした。こういうステージづくりのおかげで、物語の中へスムーズに移行できた。 今回のロクサーヌ役は杏樹ちゃんとしては珍しいヒロイン役。才知と気品に溢れた高貴なる美女だが、盲目的な愛の信奉者であり、その無邪気さが物語を突き動かし、やがて残酷なものへと転換する。この二面性がシラノとクリスチャンとの三角関係にそのままハマっているのがとてもシンプルで面白いお話です。杏樹ちゃんは言葉は明晰、実に表情豊か。瞳を輝かせて可憐に愛への憧憬を語る姿あり、取り憑かれたように愛を求めて行動する姿あり。紙一重の感情表現を繊細に演じている。中盤の声だけの逢瀬の場面(前説によれば三大バルコニーシーンの一つらしい)では、美麗な修辞を三島由紀夫並に重ねに重ねた愛の言葉がシラノとロクサーヌの間で飛び交うのだけど、ロクサーヌの言葉の熱の帯び方にはちょっとドキッとしてしまいます。元より、こういうシーンがあるから朗読劇というやり方はとても合っていたんだなあ。 今回は4度観劇して3パターンのキャストを観て、当然ながらそれぞれカラーの違いがあった。文章から伺えるシラノの気高さをもっとも引き出していた岸尾さん。より舞台に近い発声と立ち回りで凄みと迫力を感じさせた武内さん。アイディアとアドリブをふんだんに盛り込んで独自のシラノを作り出していた諏訪部さん。どれをとっても面白いのだが、武内さんと杏樹ちゃんのやり取りは舞台っぽくて好きだったかな。クリスチャン役の小松さんと村田さんも複雑な胸中がありつつ出てくる言葉が軽薄という難しい役どころを、時に実直に、時にコミカルに演じていたと思う。演技の違いだけでなく、細かい演出も座長ごとに変わっていたのが面白くて、大きなところだと岸尾さん・武内さんの回はヘッドマイクでの朗読だったのが、諏訪部さんの回はスタンドマイクでアフレコのようなスタイルでの朗読だった。小道具の使い方やそれぞれの掛け合いのリズムなども三者三様で、毎回発見があった。古典が題材とされているからか、演技に関しては演出家の影響は最小限に、むしろ個々人の解釈に拠るところが大きく感じられて、4度の公演を通してちょうどクラシック音楽のような楽しみ方ができていた気がする。ロクサーヌに関してもほかに気になるキャストはいたし、観たら観たで絶対面白かったとは思うのだが、僕の中では杏樹ちゃんのロクサーヌだけを頭の中にとどめておくのが正解かな。

いやホンマ…

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