音楽2014

毎年ダラダラと書いてるこのしょぼい音楽記事ですが、2014年はほとんどCDを買っておらず、特に書くこともない気はする。新譜なんて数えるほどしか聴いてないし、いちおう音楽リスナーを自称してたけどそうも言えない状況になりつつあります。ただそんなことを言っても、音楽を聴く時間が減ったわけでもなく、聴くものはPCなりiPodなりに入っているので今まで買ったものを色々と聴き直してはいた。

そういうわけで音楽2014。

○Valentin Silvestrov / Bagatellen und Serenaden
(2007, ECM New Series 1988)
シルヴェストロフという作曲家は、2007年頃にNHKでやっていたヴァレリー・アファナシエフを主人公としたドキュメンタリーの中で演奏されていて耳に残ったのだった。ここまでシンプルにノスタルジーを喚起させる音楽とは。こうした音楽はややもすると陳腐に聴こえてしまうかもしれないし、ここに収められた作品群も演奏次第ではそうなってしまう危うさを孕む。ここで聴かれる演奏にはシルヴェストロフ本人とアレクセイ・リュビモフによる透徹したコントロールがあり、マンフレート・アイヒャーの未だ鋭い美学も生きている。バガテルではピアノが強烈に「いつかどこか」を呼び起こしたかと思えば、続くエレジーやセレナーデでは融けるように録音された暖かなストリングスが聴者を幸福な孤独へといざなう。波のない海で覆われた惑星に、ただ一人浮かんでいる感覚。冷たく色のない世界。その中心である私だけが暖かさを知っている。甘い郷愁に引き寄せられながら、意識は遠のき埋没していく。この作品集を聴いて何が想起されるかは聴く人それぞれによるところで、その時その時に心から遠くにあるものが立ち現れるのだと思う。ある意味で自殺的な、そういう危険な音楽である。
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結局は、この音楽を聴いてわたしは幸福であるという事実が重要なのではと。ジャズを聴くにしても1、2年前からモダン・ジャズ回帰的なところはあるし、高1のときにセシル・テイラーを聴いてからそれこそJazz Advanceと言わんばかりに前衛であることに一つの価値をおいていたけど、最近そういう精神が薄くなってきたというか、1960年代にゴリゴリのフリージャズをやっていた人が老いてからまるーいジャズをやっているのはなんでなのかと思ってきたが、今まさしくそういうジャズプレイヤーの気持ちだ。クラシックの場合も同じような状態なのかもしれない。かといってマネリのインプロとかクセナキスとか聴いたときの脳が活性化されるような感覚はやはり何物にも代えがたく忘れられないのであり、つまり音楽中毒になってはいけない。

2014年のベストライブ。

○20140222 – 中川かのん starring 東山奈央
去年はアイドルアニメをけっこう見てたけど、アイカツ99話でのWMのステージ。あれと同じだよなと。ラブライブ2期9話なんかもそうだし、元はといえば神のみ7話がそうだ。ああいう、思わず言葉を失ってしまうような、終わった瞬間に止まっていた時が動き始めるような、圧倒的な凄みの世界ですよ。あのアンコール2曲で見たものは。アニメを出ればもはや理想でしかないように思われる空間を中川かのん starring 東山奈央は目の前で体現してくれた。アイドルのライブに行ってあんなに幸せなことはないし、むしろそういう瞬間を求めるからこそなのであって。

このライブに行ったのは、ほかならぬ東山奈央本人のステージでの在りように惹かれたからだった。その期待はこのライブでも、それからずっと東山奈央を見ていても、大正解だったと胸を張って言える。2014年の方向性を決定づけた日だったし、自分の世界を変えてくれたんだということ。

本当は年明けてすぐにだいたい書いたんだけど、なんでだったかドラフトにしといてその後2ヶ月ぐらい忘れたまま気付いたらサイト12年目突入してたいつもの流れでした。

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