アイドルおたく活動も一段落したため少し久しぶりにジャズのライブ、ということでニック・ベルチュを聴いた。Baroomは初めて来たというか、ちょっと前にトミーカ・リードのチケットが取れなくて行き損ねたのだが、かなり良い会場だった。円形のシアターになってるのは新鮮。
もともと3列ぐらいしかないが席は最前。上手側だったのでドラムが目の前だった。ニック・ベルチュ・ローニンはサックス入りのカルテット編成。上にジャズのライブとは書いたものの、やっているのはほぼミニマル音楽である。誰か1人からあるモティーフが投げかけられ、そこにベース、あるいはサックス、といった具合に一つ一つレイヤーが重ねられていき、有機的なドライブ感あふれるビートを伴った複雑なサウンドスケープが出来上がる。するとピアノをプレイするベルチュから掛け声が発せられ、新しいモティーフが提示、サウンドは次なる姿に移り変わっていく。
音響とグルーヴの交錯によるトリップ感とか、ミニマルな音形から始めてレイヤーを重ねていくみたいな方法論はマイルス・デイヴィスのOn The Corner的なところもあって、しかし表象されるテクスチュアはカオスではなく、ベルチュによる整然とした禅思想的美学が生きている。ピアノの音色も美しければ、パーカッシブな内部奏法には身体を揺さぶられる。サックスも含めて、このバンドでは全員が同時にソロ楽器でありリズムセクションでもあるという、アンサンブルにおけるバランスの緊張感が生で感じられたことがとても楽しかった。真っ先にスタンディングオベーションしてしまいました。
ちょっと前のソロピアノのアルバムEntendreのLP売ってたから欲しかったなー。終演後の店内はジャッキー・バイアードが流れてた。